妄執

 夜、眠る間際に馨った懐かしい匂いは、
 それは、凍った雪の冷たい匂い、
 つう、と皮膚を射る柔い氷の匂い、
 甜い、砂糖水の匂い、
 それは、おんなの皮膚の匂い、
 滑らかな、温い焼けるような匂い、
 白い、靄の艶めかしい匂い、
 それは、眠る間際に懐かしく馨った匂い。

(2006)


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