白黒写真

君の写真を撮ろう
雨上がりの月夜の帰り路で
ただただ一つの月のひかりを頼りに
君は微かにさえ笑うことなく
一つ言葉を零すだろう
僕は微かに笑って
一つ遅れてレリーズを握り締めるだろう
黒炭をカンバスに叩き付け
デッサンを塗り潰す
君は月のひかりを頼りに
僕は印画紙に
デッサンを塗り潰す君を焼き潰す
その赤いひかりは
あの日僕達が辿った帰り路の一つ灯りに重なり
僕の網膜に静かに浮かび上がる
君のカンバスに音を立てて重ねられる
ただ一つの月のひかりを頼りに
君は僕を視覚した
僕は君を視覚した

君の写真を撮ろう
僕を焼き付けた君を


(2006)


INDEX

inserted by FC2 system