感傷融解

感傷的な言葉を零した瞬間に戸惑って呉れた横顔が余りに端正でわたしは失敗したと思い、同時に酷く自虐的で嗜虐的な気持ちになりました。掌は常に堅く綴じていなければなりませんでした。わたしの手は誰かと繋がれるような五指を持ってはいけないのです、わたしの手は。綴じて閉まった場所からは何一つ零れる筈がなかったのです。零れてはならなかったのです。砂粒ひとつでさえ。嗚呼、成らばわたしの手は不良品でした。乱雑ながらも堅く綴じた筈の五指は囁かな衝動で余りに簡単に綻びを見せたのですから、不良品です。それでも、わたしの醜い綻びがあなたの端正な横顔を形成したと謂うならば、今宵少し弱い意図で再び五指を綴じてしまいましょう。そうして幾度も解かれ幾度もその横顔に見える、幾度も綴じられ幾度も解かれる、掌は醜さを増すでしょう。
その掌の醜さがあなたへの総ての灯です。

(20081010)


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