冬雨

 気候が真直ぐ冬へ向かっていくのがわかる。
 早すぎる覚醒に体温調節機能は追い着かず、
 人工的に室温を上げようと床を這いずる右腕。
 鳥肌立つその腕に自ら望んだ痣は存在を潜め始め、
 辿り着いたリモコンのスイッチを押す。
 
 雨の奄ノ愛を。

 私は睡眠中に受信したメール総てに目を通し、
 潜り込む毛布は今だに母の奄ェ残っていて、
 そこに包まって少し泣いた。

 室温は充分に上がっていた。

 窓の外は、
 冬に向かう雨。
 恐らくこのまま、
 冬に向かって気が振れていくのだ。
 
 私は私に冬のような金属を、
 翳した。

(2006)


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