あかいとり

 僕らが朝、糊付けしすぎて固くなったリネンの中から起き上がって見た時には、既に鳥篭のなかにいきものの気配はなくなっていた。錆色の鳥篭の底で、黄色い羽と緑色の羽を丁寧に閉じて小さな目を瞑り鋭い爪を上に向けて鳥は死んでしまっていた。
 鳥は死期を悟らせないときいた。
 でも、なんとなく僕らは、前の晩に、明日の朝この鳥はいなくなってしまうのだろうと思って、かなしくなって、二人で揃いの黒いワンピースを着てレクイエムを流しながら百合の香を焚いてスープとパンとワインを一口ずつ食べて、祈ってから眠ったのだった。
「葬列の仕度を」
 僕らは昨晩と同じ揃いの黒いワンピースに手早く着替え、鳥を白い絹に包み、金の鎖と木の靴と石の指輪も一緒に持って、庭に出た。そうして、杜松の木の根っこの下に全部を埋めて、鈴を鳴らしてその鈴を枝に下げた。
 僕らはうつむきながら部屋に戻り、赤い林檎と黒いシチューを食べて、総ては終わった。
 窓辺で鳥篭の扉をあけて、僕らはまたリネンにもぐりこむ。
 眠る瞬間に鳥の声が聞こえて、僕らはまた安心して眠れるのだ。


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